富津の週末住宅

都心に暮らすクライアントは、人工的な環境から離れる時間をもちたいと考え、将来的な移住を視野に入れた 2 拠点生活の住まいを計画することになった。敷地は東京湾の海岸線沿いにあり、豊かな海が見渡せる。反対側には山が迫り、木々が敷地に覆いかぶさるように茂っている。この豊かな自然の総体と同居し、クライアントの体と精神の緊張がやわらぐような、そんな住まいのあり方を目指した。

フットプリントを最小限としたコンパクトな 2 階建てとし、1 階を静謐な寝室空間、2 階を開放的なリビング空間とした。屋根を分割し異なる方向に延ばしつつ、外部とつながる隙間をつくっていった。また、梁や垂木といった上部架構はすべて現しとすることで屋根の動きを強調した。

これらの構成によって、内部には包まれるような感覚と開放感が同居するような空間が生まれた。また、建築をそっと敷地に置いたようなあり方とすることで、海や山の豊かな表情が見え隠れする、自然との心地よい距離感が構築された。